ヤーコンの栽培
1. 環境条件
  1. 適応性は広いが,一般的には冷涼な気候を好む。
  2. 霜に弱いので,畑での栽培は無霜期間に限られる。
  3. 土壌は特に選ばないが,排水良好であることが望ましい。
  4. 温暖地域では生育後半に塊根が急速に肥大する。
2. 植え付け
  1. 繁殖には塊茎の栄養芽,または挿し木で得られる挿し芽を用いる。塊根(いも)には発芽能力がないので注意。
  2. 塊茎は適当な大きさに切り分けて植えつける。畑に直接植えつける場合には,20〜30g,またはポットで育苗する場合には5g程度に切り分ける。
  3. 畑への植え付け時期は,春先降霜の恐れがなくなったらできるだけ早く。
3. 施肥
  1. 有機質肥料を十分に(堆肥として2〜3t/10a)元肥として施すことが望ましい。
  2. 十分な有機質肥料の施用があれば,化学肥料は基本的に必要ない。施すとしても控えめに。
  3. 追肥は基本的に必要ない。
4. 整地と栽植密度
  1. 高畝作りとする。
  2. 栽植密度は1,600〜2,000本/10aとし,株間40〜60p,畝幅0.8〜1.2m。
5. 管理
  1. 生育初期,特に梅雨明けまでの除草。
  2. マルチは初期生育を促進するが,温暖地では,梅雨明け以降地温の上昇により生育を阻害することがあるので注意する。
  3. 病害虫としては,炭腐れ病,ヨトウムシ,ネキリムシ,アブラムシなどがあるが,防除は一般的には特に必要ない。
  4. 乾燥に弱いので,旱魃時には早めに灌水する。
6. 収穫と貯蔵
  1. 収穫時期は10月下旬〜11月下旬の初霜前後。無霜地帯では12月まで可能。
  2. 塊根(いも)は乾燥しやすいので,新聞紙等で包装して低温で貯蔵する。冬季は土中,春先からは冷蔵庫などに入れる。ただし,凍結させないこと。
  3. 塊茎は,@凍結させない。A乾燥させない。B発芽させない。の条件を満たす環境で保存し越冬させる。温暖な地域では,土中で越冬させることができる。
7. 品種
1)ペルーA
1984年,ニュージーランドから導入された個体群を起源とする系統群で,系統群内ではほとんど表現型に差異がなく,ペルーAの名前で呼ばれ,日本では最も普及している。一般に,草姿は立性,茎数は少なく茎葉重量は軽い。塊根(いも)の収量多く,早掘りに適する。塊根の形状は良く,食味良好。塊根の裂開多く,貯蔵性は劣る。貯蔵中のフラクトオリゴ糖の減少は早い。甘みが強く,フルーツヤーコンとしての評価が高い。肉色の淡いオレンジ色は粕漬けに良く映える。
2)サラダオトメ
ペルーA系統と比較して,茎長は同程度で茎数は多く,茎葉重は重い。草姿は中間型。塊根の早期肥大性は劣る。塊根収量は同程度かやや少ない。塊根の裂開は少ない。外観,貯蔵性は良好。皮色,肉色共にやや白く,糖度はやや低い。フラクトオリゴ糖の含量は同程度。貯蔵中のフラクトオリゴ糖減少遅い。農林水産省四国農業試験場育成,2000年に登録。
3)アンデスの雪
ペルーA,サラダオトメと比較して,茎長はほぼ同程度。茎数と茎葉重はペルーAより多く,サラダオトメより少ない。不正形のイモが出やすい。貯蔵性は良好。塊根の皮色は淡灰茶色で肉色は白。糖度は低い傾向にあるが,フラクトオリゴ糖は高い傾向。農水省四国農試で育成,2003年登録
4)サラダオカメ
ペルーA,サラダオトメと比較して,茎長は長く,茎数と茎葉重は中間程度。塊根収量は両者より多いが,不整形のイモが出やすく,外観は悪い。塊根の裂開はサラダオトメと同程度。塊根の皮色は浅灰茶色で肉色は浅黄橙色。貯蔵性は劣る。農水省四国農試で育成,2003年登録